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2026/05/01 18:17

なにやら最近デカフェがブームとか。
ちょっと前まで「デカフェは不味い」だの「必要性を感じないー」とかって敬遠されてた気がするんですけど、TVやSNSなんかで話題になり始めると一気に市民権を得てしまう辺り、令和という時代を感じちゃいますね。
まぁ、そうは言っても飲んだことがない人も多いでしょうし、じつは海外と日本ではデカフェ事情もちょっと違ったりします。
ちと小難しい内容も多くなってしまいますが、お付き合いくださいませ。
┃デカフェに「安全性」が問われる理由

デカフェの消費量自体はここ20年ほどの長きにわたって着実に増えてきました。
最近になって急に話題に取り上げられるようになったのは、2024年から2025年にかけて急激に消費が増えたからなんですかね。
我々のようなロースターが地道に啓蒙してきたから、ようやくブームと呼べるほどに市場が成長したと思いたいところではありますが…
どうせインフルエンサーの影響なんでしょうね。知らんけど(・Д・)
さて、そんなブーム真っ只中のデカフェではありますが、デカフェには必ずと言っていいほど「とあるワード」がつきまといます。
それは「安全性」。
日本で流通しているデカフェはともかく、海外で売られているデカフェは薬品を使ってカフェインを除去してるものも広く流通しているので、それを懸念してる人って多いんですよ。
カフェインを除去するのに使われるジクロロメタン(塩化メチレン)という薬品は工業用途として使われている発がん性の懸念がある溶剤で、アメリカなんかでは作業者への安全性の観点から規制強化が検討されるレベルのシロモノだったりします。
「有機溶媒抽出法」というカフェイン除去方法なんですが、日本での流通量は少ないものの、仮に有機溶媒で処理されていたとしても、そのことはおそらく明記されていません。
とまぁ、これだけ聞くと
( ゚д゚) < 発がん性!? デカフェって危険なのねぇ
( ゚д゚) < 明記もしてないって闇を感じる…
とか思われてしまいそうですが。
まぁ、基本的には安全です。
( ´Д`)y━・~~(絶対とは言わんけどな)
日本では残留基準が設定されていて、それに適合したもののみが流通していることになってます。
なので、国内で売られてる以上は法令上の安全基準は満たしているということになります。
建前上はね( ´_ゝ`)
一律で全数検査しているってワケではないので、その点が気になるならカフェイン除去法がハッキリしないデカフェは買わない方が無難ではあります。
先ほども言ったように有機溶媒のデカフェというのは国内流通量は少なく、一部のインスタントコーヒーや業務用コーヒーで使われている程度。
業務用コーヒーというのは、レストランなどの飲食店、ホテルの朝食ビュッフェ、オフィス向けのコーヒーサービスなど、「デカフェ」としか表示されずに提供されているようなもののなかにはそういった有機溶媒のデカフェが採用されていることがあります。
とはいえ、残留濃度が基準値内であれば安全ですし、安価で風味も良好なデカフェに仕上がるのも利点ではあります。
先に挙げたジクロロメタンはともかく、エチルアセテートを使ったデカフェ(シュガーケーン)なんかは天然由来の薬品なので安全性も高いですし、海外ではスペシャルティコーヒーの専門店で扱うこともあります。
それでも日本ではその旨を明記しないことが多いのは「有機溶媒(=薬品使用)」というイメージが悪いからです。
海外ではカフェインをコントロールするために日常的に飲まれるデカフェですが、日本では妊娠中・授乳中の人とか健康を気にする人があえて選ぶ商品なだけにそういったイメージに左右されやすいということなんでしょう。
まぁ、どういった方法でカフェインを除去しているかについては表示義務はありませんので、伏せること自体が悪ってワケではないんですけどね(´-ω-`)
でも我々スペシャルティコーヒー専門店を謳うお店は、ほぼ必ずカフェイン除去法について言及します。
スペシャルティコーヒーの理念では商品のトレーサビリティ(透明性)をもっとも重視しますからね。
有機溶媒であることや助剤の残留濃度をしっかり明記した上で扱うというならともかく、味や値段のために安全性に関わる部分をイメージの都合で伏せるなんてもってのほかなんですよ。
ゆえに日本のスペシャルティコーヒー専門店では、水や気体など自然由来の方法でカフェインを除去したデカフェが主流となっています。
┃日本で流通しているデカフェの主な製法

では、日本で流通しているデカフェの多くは、どのようにカフェインを除去しているのか?
答えは「水」か「二酸化炭素」のほぼ二択です。
デカフェの商品紹介やパッケージなんかをよくみると、カフェイン除去に用いられた製法が記載されていることがありますので、よく見かけるヤツを紹介しますね。
◆水抽出法(Water process)
・スイスウォータープロセス
Swiss Water社(カナダ)
・マウンテンウォータープロセス
Descamex社(メキシコ)
水を使ったものでは、この2種類がよく目にする名前だと思います。
工程をざっくり解説すると、
コーヒー生豆を水に長時間浸して成分を水に溶かし出し、その水を特殊なフィルターで濾過してカフェインのみを取り除いたコーヒーエキスを作ります。
そのエキスに新しいコーヒー生豆を漬けることで、濃度差(=浸透圧)によりカフェインだけを生豆から抜き取ることができます。
スイスウォーターも、マウンテンウォーターも会社は違いますが処理工程は似たような感じです。
ただ、最終的なコーヒーは両者でだいぶ異なった感じに仕上がります。
スイスウォータープロセスのコーヒーは豆の表面が焦げやすいため、燻り臭が気になるかもしれません。
一方、マウンテンウォーターは黒糖のようなちょっとしたクセを感じることが多いですが、香りは良く、焙煎の幅も大きくとれます。
いずれも通常のコーヒー豆に比べて火が入りやすく、特にスイスウォーターは焙煎レンジが狭いため、焙煎難易度はやや高めと言っていいかと思います。
まぁ、あくまでワタシの経験上の主観に過ぎませんので、ご参考程度に捉えてくださいね( ´Д`)y━・~~
◆CO2抽出法(CO2 process)
・超臨界二酸化炭素抽出法
・液体二酸化炭素抽出法
要は二酸化炭素を使ったものですね。
超臨界状態のCO2はカフェインを選択的に抽出しやすく、毒性もないうえに生産時の火災なども含めて扱いやすいということがメリットですね。
豆を水に浸すようなこともないので、カフェイン以外の成分に影響が少なく、風味損失が抑えられるため風味豊かな美味しいコーヒーに仕上がります。
デメリットは主にコスト面。
スペシャルティグレードみたいな小ロットの豆を処理すると、割高になるのであまり現実的ではないんですよね。
よくある単一農園のスペシャルティコーヒーでもデカフェ処理を施すことで、中米産のゲイシャみたいな値段になっちゃいます。
なので、一般的には価格を抑えるためコモディティグレードなどの安価な豆を使って価格のバランスをとることが多いんですよ。
「デカフェ処理は優秀だけど豆自体がクソ不味いので、結果たいして美味しくない」なーんてこともあります。
┃カフェイン除去率による違いはあるのか?

デカフェにはカフェイン除去率が記載されていることがあります。
おそらく「97%以上除去」「99.9%以上除去」のどちらかだと思います。
結論から言うと、ほぼ違いはありません。
わずか3%以下の差ですからカフェイン量としては微々たるものですし、それによって風味損失に差が出るということもありません。
この表記の違いは単にそのデカフェが「欧州基準」か「アメリカ基準」どちらに準拠してデカフェ処理されているかに過ぎません。
なんとなく99.9%カフェイン除去されている方が目的に叶っている感じがするのでそちらを選びたくなってしまいますが、そういったイメージ的な付加価値くらいしかありません。
というわけで、今回はデカフェに関して解説しました。
ちなみに当店では(現在は)マウンテンウォータープロセスのデカフェ豆をチョイスしてます。
過去にはCO2やスイスウォーターも扱ったことがありますが、やはりマウンテンウォーターのデカフェが価格的にも味覚的にも「ほどよい」んですよね。
ベースになっている豆はコモディティグレードですが、欠点豆は丹念にハンドピックしてます。
まぁ、欠点豆が多すぎて死ぬほど面倒くさいですけどね( ;´Д`)
スペシャルティコーヒーのような特徴的な尖った風味みたいなものはないんですが、ちゃんと美味しいコーヒーに仕上がってます。
デカフェは円安で原価が上がってますし、ハンドピックは通常の5倍くらい時間かかるしで、個人的にはあんま売れゆきが良くなられても困るんですけどね(本音)
デカフェを飲んだことのない方は、この記事を参考にぜひ一度試してみてくださいね!
